2025年09月24日 「「シャトー レ コン デ セビュイロー 1993」について」
Wine Lab.takuvin代表の三宅様より、 「シャトー レ コン デ セビュイロー 1993」のいわゆるカベルネ系のピーマン香について以下のコメントを頂戴しました。
野菜トーン(CSやCFで言われるピーマン香、グリーントーン、ヴェジタルトーン)は「メトキシピラジン」と言います。
一般にピラジンと呼ばれる化合物質です。実際にはいくつかあり、代表的なものは次の2つです。
非常に低濃度で感知されやすいので、ワインの香り、テイスティング等には大きな影響を与えます。
2-メトキシ-3-イソブチルピラジン (IBMP)
2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン (IPMP)
ただ、ここまで細かく知らなくても、ピラジン=ピーマン香というニュアンスで大丈夫です。
ピラジンは基本的にカベルネ族に現れる香りですが、強すぎると欠陥臭とみなされがちです。
特に果実の熟度トーンに重きをおくニューワールドでは嫌われます。
半面、旧世界では適度なグリーントーンが品種特性を表したり、クールなエレガントトーンを表すということでそこまで嫌われることもありません。
因みに、ニューワールドで、あまりに果実トーンが暑苦しくなるのでグリーン感を入れたい時は、除梗した梗を残しておいて網に入れてタンクに浸けるというようなことをしています。(ステム・リテンション)
ピラジンはそもそもカベルネ系のブドウに存在する化合物質ですが、その生成については、ブドウの色付期までにピークになり、糖度の上昇とともに下がるのが基本です。
しかし、それ以外にも収穫前の降雨量や果実と表土の距離といったことも影響していると言われます。
また冷涼な年、冷涼なエリアでは残りやすいと言われます。
ワインの熟成ポテンシャルの主要因がピラジンであるという訳ではないのですが、このアイテムから感じるのは、少なくともピラジンが効果的に残っており今の熟成テイストにプラスに働いているということ。
一方、リリース時は相当に強いピラジンであったと考えられる、つまりは冷涼で未熟果ではなくとも比較的酸が強く出るオフヴィンテージであったこと等が想起されました。
それらを合わせてテイスティングすると、今のテイストにピラジンが良い意味で象徴的なテイストトーンになっていると言えるのではということでした。
ワインにおける直接的な熟成要因は仰るように酸度やフェノール、果実熟度(Alcやグリセリン)ですが、ビッグ・ヴィンテージと言っても暑い年のビッグ・ヴィンテージは長く持たないと言われるように、熟成させた時のテイストや風味を考えた時にはオフ・ヴィンテージや狭間ヴィンテージの可能性が見えてきますし、特にボルドーならピラジントーンは大きなキーワードになるとも言えるのではないでしょうか?
特に熟成アイテムについてはピラジンから考えてみるのも非常に興味深いと思います。
あと追加で、あのワインに特徴的かつ例外的な茸香(マッシュルーム香)ですが、非常に印象的かつ珍しかったので少し調べてみたところ、数は少ないですがいくつかのカベルネ系から感じられるというケースがありました。
Moss Wood 2022 Cabernet Sauvignon 「aromatic yeast-derived complexity, which appears as mushroom and trufflenotes in the background of the nose」や中国黄土高原のカベルネのテイスティングコメントにもあるようです。
もちろん様々な要因があるようですが、タンニンやフェノール、湿度、冷涼といった要素が前提になっているようです。
確かに合致する気がしますね。
そんな単純な話ではないですが、こういったところも非常に興味深いアイテムです。